サンクスロール

8月に、お久しぶりの自社ブランドソフトをリリースしました。

披露宴を彩る演出映像手作りソフト
『ウェディングエフェクト #1 サンクスロール』http://grafficia.com/we/

このソフトは、結婚披露宴を締めくくる「エンドロール」と呼ばれる映像が簡単に自作できるソフトです。
コトバンクの婚式・ブライダル用語集によると、エンドロールとは…

結婚披露宴の新郎新婦退場後などで、結婚式を 「みんなで完成させた一つの作品」 と見立て、ゲストやプランナーの名前などを映画のエンドロールのようにして流す映像演出。
エンディングロールとも言います。ゲスト一人一人に対し、お二人からの感謝の言葉を加えたり、思い出の写真などをお好みの音楽と共にスライドショーに編集し、一緒に流すなど、さまざまなアレンジが可能です。」

ということで、「サンクスロール」を使うとこんな映像が作れます。


一般的にエンドロールといえば、映画やドラマの最後に流れるアレが思い浮かびますが、海外ではスタッフクレジットと呼び、エンドロールは和製英語らしいです。


さらに、結婚披露宴で "エンド" ロールはあんまりだな、ということで、縁起的にも意味的にもよさげな「サンクスロール」と命名しました。
ぜひ定着していただきたい。そして検索エンジン上位をがっちり確保したい。


このエンドロール改めサンクスロールは、二人の生い立ちを語る「プロフィールビデオ」と並んで人気の演出。
一日中祝福されまくった新郎新婦が、最後ぐらいはゲストにスポットを当てたいということかも。


別の理由として聞いた噂。
イマドキの披露宴ではゲストが退場する際、新郎新婦がアメやらクッキーやらを手渡しする儀式があります。
ところが、酔っ払ったオジサンが、司会者の「しばらくお待ちください」をガン無視して席を立つと準備が間に合いません。
このせっかちなおっさんの足止めのために流す、という説です。ありえる。


映画の最後に流れる映像との違いは、出席者のお名前に、新郎新婦からの “メッセージ”が付け加えられていることです。
ところが、メッセージとお名前をバランスよく簡単に配置できるソフトはほとんどなく、手作り派の皆さんは大変苦戦します。
適当にとってつけたようなエンドロール機能のソフトを掴まされたりすると、さらに混迷を極めます。


「サンクスロール」は、ユーザーが意識しなくても、自動的にお名前とメッセージが見やすさく配置されます。
このあたりのこだわりは、専用ソフトの意地。


さて、「ウェディングエフェクト」はシリーズものとして、第2弾、第3弾と続けていきますが、「サンクスロール」の問い合わせや機能要望に応えるのがやっとで、なかなか進んでません。
デザインテンプレートのバリエーションも増やしたいんだけど。
それでも、もっと新郎・新婦の皆さんに喜んでもらうべく、少しずつ進めていますので応援お願いします。

FY2011 in 世田谷

ウチの会社には専用の事務所はなく、東京在住の相方と松本在住の社長(自分)は自宅作業が基本。


とはいえ、仕事の打ち合わせやセミナーで上京する機会が多く、その都度移動するのは効率が悪い・・・
そこで、知り合いが仕事場として借りているマンションで一緒に仕事させてもらいながら、夜は簡易ベッドで寝泊まりさせてもらうことに。
2010年の夏に転がり込んでから1年半。まだコワーキングなんて言葉もない頃に時代を先取りしてました。


高井戸駅にほど近いマンションは、コンクリートの打ちっ放しで全く生活感を感じさせない部屋でしたが、自分にとっては大変に居心地が良く、2011年度は120日近くここで生活してました。




一年前の3.11も、発売したばかりの自社製品の機能追加をしながら、次の製品の仕込みに奮闘していた瞬間・・・
あの地震を体験した場所の光景は誰でも脳裏に焼き付いてると思うけど、自分にとっては事務所の風景が鮮明に思い出されます。


倒れそうなディスプレイを押さえつけながら反対の建物のTVアンテナが飛び跳ねる様をただ見つめてたこと。
オフィスシェアしているメンバーと朝までニュースに釘付けになったこと。
甲州街道の歩道に徒歩帰宅者があふれていたこと。
翌日どうしようもなく不安になって、目の前を走る世田谷線に乗って三軒茶屋をふらついていたこと。
twitterの節電呼びかけに応じて、暖房も証明も切って毛布にくるまりながら見た夕焼け。


それからの1年、会社と自分にとっては試練の連続で、相当厳しい時間を過ごすことになったけど、なぜかここに来ると、「なんとかなるんじゃね?」みたいに思えたのは不思議。


そんなわけで、下高井戸は忘れられない街になったのですが、諸々の事情により 3月で退去 することになりました。
残念ながら、この地に居る間にビジネス的な成果を上げることは出来なかったけど、いよいよ完成に近づいた渾身の映像エンジンはここで培ったもの。デキは本当に自信ある。


ビジネスが成功した暁には、いつも横目で見ながら入れなかったバーで祝杯を挙げたい。

グラフィックスとユーザーエクスペリエンス

1997年〜2000年頃、名だたるプログラマーの間では3Dグラフィックが大流行。
自分も入社したてのソフトベンダーでDirectXに没頭し、何とか3Dを活用したパッケージソフトを企画したいと、金子勇さんや、清水亮さんのホームページを見ながら奮闘してました。
そして、遙か彼方の遠い存在、3Dグラフィックの神として君臨されていたのが
マイクロソフトの川西裕幸さんです。


ところが、3Dグラフィックは "ゲーム専用技術" として一部の技術者のものとなり、自分も「住宅シミュレーター以外金にならない」と判断して企画を断念。個人でフリーソフトを1本リリースした後、3Dから疎遠になりました。
当時のカリスマだった清水さんは携帯電話の世界へ、金子さんも匿名でP2Pソフト Winny を開発し、後に大きな物議を醸すことになりますが、おそらく3Dへの興味は全盛期よりは薄れていたんじゃないかと推測します。

その後の自分は、稼ぎ頭のデジカメ系ソフトの部門で、写真を映像作品にして楽しむ「フォトムービーソフト」のプロジェクトリーダーとして企画・開発を担当しました。
その後紆余曲折を経て独立、映像系ソフト専用のベンダー設立に至っています。

今の会社には、小さなソフトベンダーとしての方針があります。

・機能のボリュームを追求せず、シンプルで触り心地に優れたアプリを目指す。
・映像合成や動画出力などの基礎技術には手を出さず、既存の技術を使って操作性やデザインへの投資に集中する。

そんな折、それにぴったりあった技術に出会いました。マイクロソフトWindows Presentation Foundation、 通称 WPF です。WPFは、ゲームソフトのように、なめらかにアニメーションするユーザーインターフェースが作成でき、動画も画像も恐ろしく簡単に扱える夢のような仕組み。独立のためにまさに欲しかったプラットフォームです。


「いける、これで勝てる!」と確信してからはWPFに没頭し、マイクロソフトセミナーを受けまくりました。そこには、"3Dグラフィックスの神" から "ユーザーが感じる体験(ユーザーエクスペリエンス:UX)" の専門家へとクラスチェンジされていた川西さんがいつもいらっしゃいました。


なにせこちらは 人生かけて WPFに入れ込んでるので、セミナー後は川西さんを拘束して質問攻めにしてました。迷惑な奴。
勤めていた会社に、同じくエバンジェリストの高橋さんと一緒にお越し頂いたこともあります。


川西さんは独立に対して心配して下さり、自分が最後に関わった製品のニュースリリースを見つけられた時は、「まだ続けられるようで良かったですね!」と、メールしてくれたのですが、「私はこれが最後で、まもなく退社します」と応えると、「そうですか、がんばって下さい、応援してます」と励ましてくれました。


その後も各所で行われるセミナーで、相も変わらず隙を見つけては質問攻めにする日々が続きます。その日、2011年12月21日も、マイクロソフト本社でWindows Phone のイベントがあり、川西さんを含め、そうそうたるメンバーがサポート役として集まる中でアプリを開発するという幸せな時間を共有させてもらいました。
途中、ある参加者が川西さんに画像処理の質問すると、笑顔で僕に近寄り、
「ハイ、答えて!」と言って、ゆっくりと椅子に腰を下ろしました。
川西さんの隣に座ってた方がその "ムチャ振り" を茶化すと、
「こういう人脈があるのも能力です」と笑ってました。

ほんの少しだけ神様の末席において頂けたのかなと、嬉しさと気恥ずかしさに駆られながら、これからリリースする製品でもっと認められたい気持ちが強くなったのを思い出します。



川西さんはこのイベントから帰宅する途中、交通事故に遭われ 2012年1月20日 に永眠されました。


悲しみに暮れているのは自分だけじゃないことを認識するために、数多くの川西さんを悼む記事ツイートを読み漁っていると、みなさんの川西さん像が
「かつて3Dグラフィックスの神として君臨した偉大な存在」派と
「UXについて親切に教えてくれる優しいエバンジェリスト派の
2つに分かれていることに気がつきました。


川西さんが取り組んでいたテーマが、グラフィックスからユーザーの五感に響く体験へ変わった証拠でもありますが、それがマイクロソフト社の指示なのか、川西さんの意志なのかはわかりません。


でも、3Dグラフィックスが寂れてきたからUXの専門家に鞍替えしたんじゃなく、この2つには強い関連と連続性があるからこそのUXの専門化として活躍されたんだと確信しています。川西さんの高いグラフィックスに関する見識は、幸せで豊かな体験の源として不可欠なものなんだと思うのです。


ユーザーエクスペリエンスとは、開発者がユーザーの皆様へ送る "おもてなし" だと思ってます。
清水亮さんの追悼エントリーには、これからのゲームはモバイルを指向すべきかどうか、口論になったエピソードが語られています。


僕の勝手な想像ですが、川西さんは、
「(当時の)携帯電話のようなチープな表現では、ユーザーを"おもてなし"するに足りない」と主張し、清水さんは、
「どこでも手のひらで繋がる体験こそが、これからの"おもてなし"の本質だ」とおっしゃっているのかなと思います。


この議論に決着を付けるまでもなく、携帯電話はゲーム専用機に匹敵するグラフィック性能を携え、"スマホ"と呼ばれるようになり、 i-mode アプリを作ってた開発者は3Dグラフィックを会得すべく奮闘し、3Dプログラマーはその住処をスマホに移して能力を発揮しています。
お二人が目指した"おもてなし"は、高度に融合して生活に浸透しつつあります。


グラフィックスとユーザーエクスペリエンス。
僕はそのつながりを少しでも表現できればと、2009年と2010年の マイクロソフト tech・ed ライトニングトークに登壇しました。

WPFでミニチュア風動画を楽しもう』


『アプリケーションの文字を見やすくするテクニック』

どちらの発表も担当エバンジェリストとして川西さんに発表をご覧頂き、僕も神の前で無様な発表できないプレッシャーと戦いました。


川西さんから影響を受けたみなさんは、古参も新参も関係なく、グラフィックスをユーザーエクスペリエンスに昇華させるべく、これからも奮闘していくことでしょう。今の僕にできるのは、ささやかながらその一端を担うことだと思っています。


偉大な功績に感謝しながら、川西さんのご冥福を心からお祈りいたします。これからも見ていてくださいね。


【川西さん最後の著作です】

UXデザイン入門

UXデザイン入門

Steve Jobs, 1955 - 2011

Apple創始者スティーブ・ジョブズ氏が亡くなりました。
ジョブズ氏の名前を初めて目にしたのは、80年〜90年代の「ログイン」というPCマニア向け雑誌です。当時、熱狂的に愛読してて、Apple][ のゲームや NeXT STEP の先進性を熱く語る記事にまんまと乗せられて興奮しきりでした。でも、正直二人のスティーブのどっちがウォズニアックでどっちがジョブズなのか区別がついてませんでした。


その後、会社を辞めて起業しようか悩んでたときに、例の伝説のスピーチを見て、相当な衝撃を受けたことは覚えてます。
すっかり忘れてましたが、Firefoxの「起業」ブックマークフォルダには今でも日本語訳のページリンクが残ってました。


その程度なので、氏について語る見識など持ち合わせてませんが、亡くなった後に次々と語られるジョブズ氏のエピソードはとても興味深いです。その一つ…

「まつひろのガレージライフ」Steve Jobs の思い出


壮絶。


このエピソード、ご本人も「伝説に尾ひれがついた」と指摘されているとおり、事実かどうか分かりません。
でも、社員が「事実」ととらえていた以上、本当か嘘かは関係なく、そこに恐怖があったことは間違いないでしょう。


Apple のすごいところは、ジョブズの(独尊的な)美学を具現化するという企業方針が、製品にもサポートにも滲んで溢れてるほど徹底されている所だと感じてます。


Apple の製品には問題がたくさんあります。ちょっと前の「日経ビジネス」に載っていたアフターサポートランキングでは、ぶっちぎりの最下位でした。
ソフト開発者からみても、異常なほどに親切マイクロソフトに比べ、Apple は、「自分たちのやり方に合わせる気があれば出してもいいよ」的な電波がビンビン伝わってきました。AppStoreから理解不能な理由で削除・掲載拒否された話は尽きません。
その代わり、多少の犠牲を払ってもその美学に酔いしれることができれば、最高のエクスペリエンスを教授できる。このブログも、こんな言葉で締められてます


「恐ろしくも楽しい時間、本当にありがとうございました。」


そこそこ賢い社員が沢山いる企業で、「個人の美学」を突き通すには、ここまでやらなきゃムリなんでしょう。そして、数多の美学は、「ひとりよがり」として世の中から消滅し、奇跡的に生き残った美学だけが大成功を収めると。


自分は以前、社員の役割・権利が守られた会社に勤めていて、そこでは「個人に依存しない」仕事のやり方を指向していました。
製品企画も「各部門の合意」が必須で、そのための根回しに走り回ったことを思い出します。民主的で平和。独裁の恐怖とは無縁。


ところが、仕事中にたまたますごい「原石」を見つけてしまい、捨てなければ会社の居場所はないと言われ、結局、石を抱えて会社を飛び出すことになってしまいました。
他の社員に迷惑をかけずに石を磨くには、独裁的に突き進むことが許される環境に飛び出すしかなかったのです。
ジョブズも会社を追われ、一つの意志を徹底して追求する覚悟をキメたんだろうなと想像します。
しかも、覚悟が人並み外れて過激だった。


ジョブズ氏のプロダクトやサービスを自分でも使いたいか?と聞かれれば、
「みんなが使ってキャズムを超えた頃に使いたい」
というヘタレっぷりですが、
Apple製品は自分の製品に影響があるか?と聞かれれば、
全力でYES
です。


自分はジョブズほどの器じゃないので、「世界を敵にしても道を切り開く」覚悟はないけど、多大な犠牲と引き替えに手に入れた「独裁権」で、ほんのちょっとでも未踏の荒れ地を開墾したい。

ジョブズ氏のご冥福を祈りながら。

難産

「ちょっとラインナップ増やしてみようかな」みたいな軽い気持ちで製品化をスタートさせたのは、3月上旬。


想定外のバグ
いつのまにか膨張した仕様
気力維持が難しい情勢
何年かぶりにひいた風邪 … etc.


悪い条件が重なり、当初の予定を1.5ヶ月もオーバーした末 よ・う・や・く! 新製品がリリースされました。


映像レタッチソフト「フィール・フィルター」
6月20日発売スタート!



どんな製品? 詳しくはこちらから。
今、リリース後の広報作業でとんでもないミスをやらかして、めり込んだ床下から出てくるのに忙しいので…


なんでいつもリリース後はこうなんだ?
次はもっと晴れ晴れとした気持ちで発売を喜びたい。

soon はどこまで soon ですか?

前の動画アップしてからはや一ヶ月。


こんなにハマるなんて・・・
気配 は感じてたけど、気のせいじゃなかった。


まずい、すごく。



遅れの原因は、ノートパソコンみたいな簡易的なグラフィック機能しかないパソコンでは、OSごと巻き込んで吹き飛ぶ というナイスな症状が見つかったから。


1万円くらいのグラフィックカードでもデスクトップ用GPUなら超快適
ぬるぬる動くよ!
どうやってユーザーに伝えればいいんだろう。体験版が快適に動いたら買ってね!みたいな感じしかないかなぁ。


ただでさえ Windows7 専用 というチャレンジャブルな仕様なのに。
アピールの仕方、考えなきゃ。


手持ちの写真でちょっとテスト(before→after)

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